無視される、皆の前で人格を否定される、必要な申し送りを自分だけ受けられない。こうした状況が続くなら、我慢して相手に合わせることを対策の中心にしないでください。まず患者の安全と自分の体調を守り、起きた事実を記録して、対応できる立場の人や窓口に伝える順序が現実的です。
一方、医療安全のための具体的な指摘まで一律に「いじめ」と決めつける必要はありません。問題になるのは、指導の目的、内容、伝え方、頻度、業務への影響です。この記事では、判断に迷う場面の整理から、相談時の伝え方、院内で改善しない場合の選択肢までを示します。読み終えたら、次の勤務で必要な安全確認と、相談先への連絡を具体的に決められます。
看護師のいじめと業務上の指導をどう見分けるか

「厳しい指導だった」と説明されても、人格否定や孤立化まで正当化されるわけではありません。厚生労働省の「パワーハラスメントとは」は、優越的な関係、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動、就業環境への害という三つの要素を示しています。同僚でも、業務上の知識や集団の力を背景に拒みにくい関係となる場合があります。個別の言動が該当するかは、経緯や態様を含めて判断されます。
| 場面 | 確認すること | 次の対応 |
|---|---|---|
| 投薬や確認手順の誤りを具体的に指摘された | 危険を防ぐ説明と改善方法が示されたか | 手順を確認し、必要なら教育担当へ相談 |
| 患者の前で「看護師失格」などと繰り返し言われた | 人格への言及、場所、頻度、業務への支障 | 発言を記録し、師長または相談窓口へ伝える |
| 自分だけ申し送りや変更事項を知らされない | 何の情報が届かず、どの業務に影響したか | 直ちに必要情報を確認し、医療安全の経路でも共有する |
言葉の強さだけでなく、「誰に」「どの場で」「何を」「何度」「どう伝えたか」を分けて見ます。ハラスメントに当たるか自分で確定できなくても、困っている事実や安全上の支障は相談できます。患者や家族からの暴言など、相手が職員以外の場合も、職場の対応体制を確認してください。日本看護協会のハラスメント対策ページにも看護職向けの相談先が案内されています。
STEP1:患者安全と自分の体調を先に守る

申し送りの欠落、指示変更の未共有、必要な応援を得られない状況では、その勤務で必要な情報を別の担当者や責任者に確認してください。「誰が悪いか」の話し合いを優先して、曖昧な情報のまま処置や投薬を進めることは避けます。安全上の問題は所属先の医療安全報告の手順にも従い、いじめの相談とは分けて扱います。
暴力や脅迫があるときはその場から離れ、勤務先の緊急対応を求めます。眠れない、出勤前に強い動悸がする、集中できず業務に支障が出るなどの変化があれば、産業保健スタッフや医療機関へ早めに相談してください。この記事から病名や就業可否は判断できません。勤務継続が難しいほどつらい場合には、受診と休み方を勤務先に相談することも選択肢です。
STEP2:事実と業務への影響を記録する

相談時には、感情だけでなく具体的な出来事を伝えると、職場が事実確認や勤務調整を検討しやすくなります。厚生労働省の「悩んでいる方」は、いつ、どこで、誰が、何を、どのようにしたかを記録するよう案内しています。勤務後、覚えているうちに次の項目を自分の言葉で残してください。
- 日時、勤務帯、場所、発言・行動、同席者
- 自分が確認・返答した内容、患者ケアや業務への具体的な影響
- 師長や教育担当へ伝えた日時、相手の回答、次に決まった対応
- 睡眠や体調の変化、受診した場合は相談した事実
たとえば「夜勤の申し送りで検査予定の変更を自分だけ知らされず、担当患者についてリーダーに再確認した」のように、観察した事実と対応を分けて書きます。院内の記録、患者情報、電子カルテ画面を私物端末へ無断で保存したり、相談のために院外へ持ち出したりしないでください。患者情報を含む資料の扱いは勤務先の規程を確認し、必要な事実は所定の報告経路で共有します。
STEP3:対応できる人へ、求める改善を具体的に伝える

相談先は行為者との関係で選びます。先輩看護師が相手なら師長や看護部、人事・ハラスメント窓口が候補です。直属の上司が相手、または相談しても取り合われない場合は、別系統の院内窓口へ進みます。日本看護協会も、まず職場のハラスメント相談窓口を検討するよう案内しています。
伝える際は「〇月〇日、誰からどの発言があり、業務に何が起きたか。今後は何を変えてほしいか」を一枚に整理します。求める対応は、事実確認、指導方法の見直し、教育担当の変更、勤務組合せの調整、配属異動などから状況に合わせて選びます。相談の秘密の扱い、関係者への確認方法、いつ結果を知らせてもらえるかも尋ねてください。相談した日時と回答を残し、約束した対応が実施されたかを確認します。
院内で相談しづらい、対応が進まない、異動や退職に関する不利益が心配な場合は、厚生労働省の総合労働相談コーナーで、いじめ・嫌がらせや配置転換を含む労働問題を相談できます。心のつらさを話したい場合の窓口は「こころの耳」です。同サイトはハラスメントの紛争そのものの相談先ではないため、目的に応じて使い分けてください。
改善しない場合は異動と転職をどう選ぶか

職場が事実確認を行い、担当者や業務分担を調整できるなら、一定期間、対応の実施状況を確かめる余地があります。一方、同じ行為が続く、上司が関与して窓口も機能しない、患者安全に支障がある、心身の不調が強い場合は、異動や休養、転職を並行して検討してください。退職の判断より先に、健康と安全に必要な行動を取って構いません。
| 選択肢 | 向いている状況 | 確認点 |
|---|---|---|
| 同じ職場で勤務調整 | 行為者との勤務組合せや教育担当を変えられる | 実施日、担当者、再発時の連絡先 |
| 院内異動 | 部署を離れれば勤務を続けられそう | 配属先、教育体制、夜勤、異動時期 |
| 別の職場へ転職 | 組織的な改善が見込めず勤務継続が難しい | 相談窓口、プリセプター、申し送りと医療安全の運用 |
求人票だけで人間関係の良し悪しは確定できません。応募前や面接時には、入職後の教育担当、困りごとの相談経路、病棟の申し送り方法、夜勤時の相談体制を質問しましょう。施設形態を変えるなら、クリニックでは少人数での役割分担、訪問看護では単独訪問時の相談・同行体制など、別の働き方に固有の条件も確認します。東京で候補を比較する際は東京都の求人一覧から施設形態や勤務条件を見比べられます。
よくある質問

新人看護師への厳しい指導は、すべていじめですか?
いいえ。患者安全のために具体的な行動を指摘し、改善方法を示す指導は必要です。ただし、ミスを理由に人格を否定する、質問を封じる、業務に必要な情報を与えないなどは別の問題です。指摘された業務内容と、伝え方・頻度を分けて記録して相談してください。
証拠が十分でなくても相談できますか?
相談できます。日時や出来事を思い出せる範囲で整理し、「確実に見聞きしたこと」と「そう感じたこと」を区別して伝えます。相談後も記録を続け、患者情報の持ち出しは避けてください。
師長に相談すると相手に知られますか?
事実確認の過程で関係者へ話を聞く場合があります。相談前に、誰にどの範囲まで共有するか、本人の希望をどう扱うかを窓口に尋ねましょう。厚生労働省の相談対応に関する案内ではプライバシーへの配慮が示されています。匿名のままでどこまで対応できるかも、窓口に確認してください。
まとめ

今日できることは、直近の出来事を日時・言動・業務への影響に分けて記録し、次の勤務で不足している申し送りを責任者に確認することです。安全上の支障は所定の医療安全の経路でも報告してください。
次に、師長、看護部、院内相談窓口のうち利害関係の少ない相手へ、求める改善と回答時期を伝えます。改善が進まない、体調が悪化する場合は、外部相談、受診、異動や休養を検討します。転職先を探す場合は、教育と相談の体制を求人票と面接で確認し、勤務条件を比較してください。
