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ナート介助の手順を看護師向けに解説|準備・介助・処置後の観察

2026 9/18
2026年9月23日

ナート介助では、医師が縫合に集中できる環境を整えるだけでなく、患者確認、創部と全身状態の観察、無菌操作、鋭利器材の管理、処置後の説明までを切れ目なく行うことが重要です。手順や使用物品は創の部位・深さ・汚染状況と施設によって異なるため、この記事は全体像の確認に使い、実際の介助では必ず院内マニュアルと医師の指示を優先してください。

「何を準備すればよいか分からない」「糸や針を渡すタイミングが不安」という看護師に向けて、ナート介助の流れを処置前・処置中・処置後に分けて解説します。

目次

ナート介助における看護師の役割と必要物品

ナート介助における看護師の役割と必要物品

ナートとは、外傷などで開いた創を縫合する処置を指す現場用語です。看護師は縫合そのものを行うのではなく、施設で定められた役割の範囲で、医師の処置が安全かつ円滑に進むよう支援します。

主な役割は次のとおりです。

  • 患者、処置部位、処置内容、医師の指示を照合する
  • 既往歴、アレルギー、内服、受傷状況など必要な情報を確認する
  • 必要物品と救急対応物品を準備する
  • 患者へ流れを説明し、安楽な体位とプライバシーを確保する
  • 清潔野を保ちながら医師へ器械・材料を渡す
  • 疼痛、出血、顔色、意識、バイタルサインなどを観察する
  • 針、刃物、器械、ガーゼなどを安全に管理する
  • 処置後の創部、全身状態を確認し、記録と患者説明を行う

患者・部位・術式の確認は、小さな処置だから省略してよいものではありません。日本医療機能評価機構の「誤認手術の防止について」では、カルテやリストバンドなどを使った患者・部位・術式の確認と、チームでの確認が示されています。外来や救急外来でのナートでも、自施設のチェック方法に従い、声に出して照合します。

ナート介助で準備する物品

必要物品は医師の指示と院内セットを基準にします。創の状態や縫合方法によって追加・変更があるため、「ナートセットを出したから完了」とせず、使用予定を医師へ確認します。

区分 物品の例 確認するポイント
個人防護具 手袋、マスク、アイシールド、ガウン・エプロン 血液・体液の飛散リスクに合わせる
清潔操作 滅菌手袋、滅菌覆布、滅菌ガーゼ、消毒関連物品 包装、使用期限、汚染・破損の有無
縫合器械 持針器、鑷子、剪刀などを含む院内の縫合セット セット内容、作動、数量
縫合材料 医師が指定した縫合糸・針 種類、規格、本数、包装の完全性
洗浄・麻酔 指示された洗浄物品、局所麻酔関連物品 薬剤名、濃度、量、期限、アレルギー
被覆・固定 創部に合うドレッシング材、テープ、包帯 部位、皮膚状態、交換方法
安全管理 耐貫通性の鋭利器材廃棄容器、廃棄物容器 手の届く位置、過充填でないこと
観察・緊急対応 バイタル測定機器、必要時の酸素・吸引・救急物品 すぐ使用できること、作動確認

局所麻酔薬や消毒薬は、同じ外観の製品や濃度違いに注意します。準備時と使用前に、患者、薬剤名、濃度、量、投与経路、期限を院内ルールに沿って確認し、容器から離した薬剤は識別できるようにします。薬剤選択や追加投与の判断は医師が行います。

鋭利器材の廃棄容器は、処置を始める前に手の届く場所へ置きます。使用後の針を持ったまま容器を探す配置は針刺しの原因になります。厚生労働省は、使用済み注射針のリキャップを原則禁止し、専用廃棄容器の適切な配置と安全器材の活用を示しています。厚生労働省「医療施設における院内感染の防止について」も確認してください。

ナート介助の手順|処置前の確認から環境準備まで

ナート介助の手順|処置前の確認から環境準備まで

1.指示と患者情報を確認する

医師の指示、処置部位、予定する処置、必要な観察を確認します。患者には氏名と生年月日など施設で定めた複数の識別子を名乗ってもらい、リストバンド、カルテ、処置指示と照合します。意識障害や小児など本人確認が難しい場合も、施設の代替手順を省略しません。

あわせて、次の情報を確認して医師と共有します。

  • 受傷時刻、原因、汚染の可能性、受傷後の経過
  • 出血、疼痛、しびれ、運動障害などの症状
  • バイタルサインと全身状態
  • 薬剤・ラテックス・消毒薬などのアレルギー歴
  • 抗凝固薬・抗血小板薬を含む内服、出血傾向に関する情報
  • 既往歴、感染リスク、予防接種歴など医師の診療に必要な情報

処置前に創の状態を観察しますが、異物の探索や深部組織の評価を看護師の判断だけで進めません。大量出血、循環不安定、感覚・運動・循環の障害が疑われる場合は、通常の準備を続ける前に医師へただちに報告します。

2.患者へ説明し、同意と体調を確認する

看護師が説明する範囲は、処置の流れ、体位、所要時間の見通し、途中で痛みや気分不良があれば知らせてもらうことなどです。処置の適応、方法、合併症、代替方法など医師が説明すべき内容に患者から質問があれば、曖昧に答えず医師につなぎます。

処置部位以外の露出を抑え、カーテンやドアを閉めてプライバシーを確保します。転落しない体位、医師が創を確認しやすい高さ、看護師が観察しやすい位置を整えます。小児や不安が強い患者では、付き添いの可否や固定方法をチームで相談し、無理に押さえつけたまま処置を始めません。

3.物品と清潔野を準備する

予定手技に合わせて物品を並べ、包装、期限、滅菌インジケータ、器械の作動を確認します。清潔野を作る前に、処置台の位置、照明、廃棄容器、非清潔物品の置き場所を決めます。途中で人や物品が清潔野を横切らない動線にします。

清潔物と非清潔物の境界が曖昧になった場合や、手袋・器械が清潔野の外へ触れた場合は、推測で「大丈夫」とせず汚染として扱い、交換の要否を医師と確認します。手指衛生と個人防護具は、血液・体液への曝露と処置内容に応じて実施します。

4.開始前にチームで最終確認する

開始直前に、患者氏名、処置部位、処置内容、アレルギー、必要物品、想定されるリスクをチームで確認します。確認中はほかの作業を止め、全員が同じ情報を共有します。

WHO「安全な手術のための指針」は、重要な段階でチームが安全項目を共有する考え方を示しています。実際には、施設がナートなどの小手術・処置向けに定めたチェックリストを使います。

処置中の介助と観察ポイント

処置中の介助と観察ポイント

処置が始まったら、看護師は清潔野への接触だけでなく、患者の表情や訴え、全身状態にも注意を向けます。器械を渡すことに集中しすぎて、気分不良や出血の変化を見逃さないようにします。

器械・材料を安全に受け渡す

医師の指示を復唱し、必要な器械や材料を確認して渡します。針や刃物は、手渡し方法と中立領域の運用を施設ルールに合わせ、先端を自分や相手へ向けません。使用中の針の所在が分からなくなった場合は、処置を継続したまま探さず、その場で医師とチームへ伝えます。

針、刃物、器械、ガーゼの数量確認が必要な処置では、開始前と終了時など院内手順で定めた時点に実施し、結果を医師へ明確に伝えます。WHOの安全な手術の指針でも、遺残リスクのある処置では、鋭利物や器械などのカウントと結果の共有・記録が重視されています。

清潔野を保つ

清潔野へ物品を追加するときは、包装の水濡れ・破損・期限を確認し、清潔面へ触れない方法で供給します。清潔・不潔の判断に迷ったら、自己判断で続けず交換します。患者が動いた、物品が落下した、飛沫がかかったなど、汚染の可能性が生じた時点で声に出して共有します。

疼痛と全身状態を観察する

処置中は、疼痛の程度、表情、皮膚色、発汗、悪心、めまい、意識、呼吸、脈拍、血圧などを患者の状態と指示に合わせて観察します。急な顔面蒼白、冷汗、意識レベル低下、呼吸困難、全身の皮膚症状、血圧低下、脈拍の著しい変化、止まりにくい出血などがあれば、ただちに医師へ報告し、処置の中断や救急対応に備えます。

局所麻酔後の症状を「緊張のせい」と決めつけないことも大切です。患者の訴えと発症時刻、使用薬剤、使用量、バイタルサインを確認し、変化を具体的に伝えます。

処置後に行う観察・片付け・記録

処置後に行う観察・片付け・記録

創部と全身状態を確認する

縫合後は、出血、腫脹、疼痛、皮膚色、末梢の循環・知覚・運動、ドレッシング材の状態などを部位に応じて観察します。処置前との変化を比較し、異常があれば帰宅や移動の前に医師へ報告します。患者が起き上がる際は、めまい・ふらつきを確認し、必要時は段階的に体位を変えます。

鋭利器材と廃棄物を処理する

使用済みの針や刃物は、手で曲げたり折ったりせず、施設手順に従ってその場で耐貫通性容器へ廃棄します。器械を片付ける前に、針・刃物・器械・ガーゼなどの数と所在を確認し、合わない場合はただちに処置者と責任者へ報告します。

CDCの標準予防策でも、使用済み針を曲げる・折る・手で操作することを避け、耐貫通性容器へ廃棄することが示されています。針刺しや血液・体液曝露が起きた場合は隠さず、直ちに施設の曝露後対応フローに従います。

患者へ説明する

帰宅患者には、医師の指示に基づいて、創部の保護、ドレッシング材の扱い、入浴・運動・仕事上の注意、鎮痛薬などの使い方、受診・抜糸の予定を説明します。説明書がある場合は渡し、患者自身の言葉で要点を確認してもらいます。

出血の増加、強くなる痛み、腫れ・発赤・熱感、排液、発熱、しびれ・動かしにくさなど、予定を待たず連絡すべき変化と連絡先を具体的に伝えます。ただし、受診基準は創の状態や施設方針で異なるため、医師の指示内容と一致させてください。

記録する

看護記録には、施設様式に沿って次の内容を残します。

  • 処置日時、処置部位、処置者・介助者
  • 処置前後の創部と全身状態
  • 患者確認、アレルギー確認、説明・同意の状況
  • 使用した薬剤・材料に関する必要事項
  • 処置中の患者の反応、観察値、実施した対応
  • 針・器械・ガーゼなどの確認結果
  • ドレッシングの状態と処置後の説明
  • 医師へ報告した内容と追加指示

「問題なし」だけでなく、何を観察してどうだったかを記載します。薬剤や材料のロット記録が必要かは院内手順に従います。

ナート介助で起こりやすい困りごとと対処

ナート介助で起こりやすい困りごとと対処

物品名や渡す順番が分からない

処置前に医師へ、想定する縫合方法と追加物品の可能性を確認します。院内のナートセットを写真だけで暗記するのではなく、各器械の名称、用途、危険な先端、受け渡し方法を指導者と実物で確認します。初回や未経験の処置は、その旨をリーダーと医師へ伝え、経験者の支援を依頼してください。

清潔操作に自信がない

清潔野の作成、滅菌手袋の装着、物品追加をシミュレーションで練習します。実施中に汚染が疑われたら、その場で申告することが患者安全につながります。気づかれないように整え直す、汚染面を消毒して続けるといった独自判断はしません。

患者が痛い、怖いと訴える

処置を急がせず、訴えた時点と痛みの部位・程度、局所麻酔後の変化、表情やバイタルサインを確認して医師へ伝えます。追加の麻酔や処置継続の可否は医師が判断します。看護師は呼吸を促す声かけ、処置の進行説明、楽な体位の調整など、状態に応じた非薬物的支援を行います。

針や器械の数が合わない

まず処置を止める必要性を医師と共有し、廃棄容器、清潔野、床、リネン、創部周囲などを施設手順に沿って確認します。見つからないまま「おそらく廃棄した」と処理せず、医療安全部門への報告や画像確認を含む対応は責任者・医師の指示を受けます。

ナート介助に関するよくある質問

ナート介助に関するよくある質問

新人看護師が一人で介助してもよいですか?

経験年数だけで一律には判断できません。施設の到達基準、処置の難易度、患者の状態、支援を呼べる体制で判断します。物品や清潔操作、緊急時対応に不安がある場合は、開始前に経験者の同席を依頼してください。

縫合糸の種類は看護師が選びますか?

縫合糸や針の選択は、創部や縫合方法を踏まえて医師が判断します。看護師は指示を復唱し、種類・規格・本数・期限・包装を確認して準備します。指示が曖昧な場合は推測で開封せず、医師へ確認します。

針を医師から直接受け取ってよいですか?

受け渡し方法は施設ルールに従います。手渡しによる事故を減らすため、中立領域を使う運用もあります。どの方法でも、合図、先端の向き、置き場所をチーム内で統一し、予告なく渡さないことが重要です。

抜糸の予定は看護師が決めてもよいですか?

抜糸時期は部位、創の状態、治療方針で異なるため、医師の指示を確認します。患者へ説明するときは予約日、受診先、予定前に相談すべき症状を正確に伝えます。

まとめ|ナート介助は確認・無菌操作・観察を一連で行う

まとめ|ナート介助は確認・無菌操作・観察を一連で行う

ナート介助では、患者と部位の照合、既往・アレルギー・内服の確認、物品と清潔野の準備、処置中の観察、鋭利器材の管理、処置後の説明と記録までが看護師の役割です。器械を渡す順番だけを覚えるのではなく、「患者の安全を何で確認するか」を各段階で言葉にできるようにします。

実施前に確認したい要点は次の5つです。

  • 院内のナート介助手順と自分の担当範囲
  • 患者・処置部位・処置内容・アレルギー
  • 医師が予定する器械、材料、薬剤
  • 清潔野、鋭利器材廃棄容器、緊急物品の配置
  • 処置中・処置後の観察項目と報告基準

初めての介助や不慣れな処置では、準備前に経験者へ支援を依頼してください。この記事だけで手技を実施せず、施設の最新マニュアル、医師の指示、指導者による確認を優先しましょう。

SUPERVISOR

この記事の監修者

監修者 武田周平

武田周平

所属 株式会社壱 / crew’ve株式会社

1985年生まれ、神奈川県横浜市出身。美容系専門商社を経て通信系事業会社へ転職し、toC・toB営業を経験。4年連続で営業売上1位を達成し、ギネス記録を更新して年間表彰を受賞しました。その後、レバレジーズ株式会社の医療系HR事業で支店長、関西・東海エリアの統括マネージャーを歴任し、採用などの人事業務にも従事。スタートアップで人材新規事業を立ち上げ、現在は株式会社壱に在籍するとともにcrew’ve株式会社を設立。これまでの知見を活かし、医療・介護業界の人材課題に向き合っています。

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